第61回ゴールデングローブ賞に思う(1/26/2004)
ここNC州のトライアングルリサーチの地域は、今年2度目の寒波の到来で日曜日の午前中から雪が降り始め、午後にはすっかり雪景色になりました。気温も下がり終日0℃を割って、路面は凍結し危険な道路事情です。月曜日は学校をはじめ多くの企業でも、休みを取ったり、午後から1部が業務をするところが出ています。しかし、子供たちにとっては思わぬ休日を喜び楽しんでいるようです。
昨晩、第61回ゴールデングローブ賞の授賞式がロスアンジェルスで行われていました。アカデミー賞に先立って行われる、この式典での受賞はアカデミー賞の受賞に大きな影響を与えると言われています。今年は、トム・クルーズが主演している「ラスト・サムライ」の助演男優賞に渡辺謙がノミネートされているなど、日本からの話題も多かった授賞式でした。ドラマ部門では「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」が作品賞を受賞し、ピーター・ジャクソン監督も監督賞を受賞したほか、音楽賞、オリジナルソング賞の4部門を制覇しました。
今年の授賞式で印象に残ったのは、この「ロード・オブ・ザ・リング」と長年の映画会への功労者であるマイケル・ダグラスの受賞(本当にすばらしい男優です)、そして外国語映画賞に選ばれた「アフガン・零年:OSAMA」でした。この作品はNHK主催の第5回NHKアジア・フィルム・フェスティバルにも昨年12月に上映され、ご存知の方々も多いと思います。カンヌ映画祭ではカメラドール特別賞を受賞した作品です。
映画はタリバン政権の抑圧の下で生きる12歳の少女とその母の生き様が描かれています。タリバン政権によって女性の一人歩きを禁じられたことにより、病院で働いていた母は就労への道が閉ざされます。生活の糧を失った家族は、少女の髪を切り、男の子に換える事を思いつきます。この作品は政権崩壊後のアフガニスタンで初めて制作された映画で、タリバン政権下の恐怖と不穏の時代を生きたアフガニスタン国民の知られざる苦しみを鋭く描いています。製作・監督・脚本はセディク・バルマク氏で授賞式での感謝のことばを聞き入っている沢山の来賓の映像は特に印象的でした。
話は「ロード・オブ・ザ・リング」に戻りますが、この作品の著作者であるトールキン博士は幼少のころから熱心なカトリック教徒でした。ですから、トールキン氏の描く「指輪物語」には聖書が教えている神の知恵が背景にあります。この作品を、より深く読み解くには聖書の知識が必要になってきます。ビルボの誕生パーティに隠された「マタイによる福音書」のおしえ。ガンダルフとホビットの奇妙な友情が体現する「箴言」のことば。塚山での一夜の意味を示唆する「列王記」などです。聖書のエピソードを知ることで、物語は一層輝きを増し、私たちの胸にせまってきます。
20 世紀の終わりに、イギリスの新聞が「20世紀最も優れたイギリスの本はどれか」というアンケートを出し、そのトップになったのが“The Lord of the Rings”でした。その後、「すべての歴史中で最も優れたイギリスの本はどれか」という他の調査もありましたが、またしても“The Lord of the Rings”は一番になりました。ピーター・ジャクソン監督は、この映画の原作者である英国のトールキン教授に敬意を表したいと述べました。モジャモジャの頭で授賞式に出席した監督は映画の登場人物のホビットのように毛むくじゃらでしたね。こんな頭で出席して申し訳なかったと述べていましたが・・・。
聖書を開いて見ましょう。第一コリント1章27〜29節です。
「しかし神は、知恵ある者をはずかしめるために、この世の愚かな者を選び、強い者をはずかしめるために、この世の弱い者を選ばれたのです。また、この世の取るに足りない者や見下されている者を、神は選ばれました。すなわち、有るものをない者のようにするため、無に等しいものを選ばれたのです。これは、神の御前でだれをも誇らせないためです。」(第一コリント1章27〜29節)
ここに、神が用いられる人の特徴が記されています。それは、同じように、知恵がないと感じている人こそ、力がないと思っている人こそ、様々な素晴らしいことができるということです。このテーマは“The Lord of the Rings”の重要な内容です。主人公のフロドという人物は、大変背の低いホビット(小人)という部族の一人ですが、このホビットは他の部族からは、重要な存在としては認められていない部族でした。しかしホビットである彼こそが、世の中で偉人と呼ばれる人々が出来ないことを可能としていきます。同時に、物語の中で、一見重要とされていないような人々が親しみと愛情を込めて描かれています。王様や偉人と呼ばれる人だけに価値があるのではなく、すべての人の命に価値があるという聖書的な考え方を、この物語を通して学ぶことができます。
もう1つのテーマは、権力の危険性というものです。それは、先のアフガニスタンの映画OSAMAの中でも、タリバン政権下で行われていた、女性の権利の剥奪などにも言えることです。物語の中では、多くの人が正しい目的のため自ら力を得ようとしますが、ほとんどの場合、いつしかそれは誘惑となり、人々はそれに負けてしまうのです。日本の政治家の中にも、そのような人々がいました。いつしか、最初の精神を忘れてしまい、誘惑に負けてその座を追われた人々です。また、その地位を利用して営利を貪った人たちも大勢います。しかし、汚職という不名誉な人生を人目を避けて送っておられる人もいます。
創世記3章を始めとして、権力の危険性は聖書の大きなテーマの1つです。もちろん、イエスは権力の道ではなく、苦しみとや謙遜の道を選び、最後には自ら十字架の苦しみを選ばれました。しかし、神は彼の弱さを(神の弱さと見えるような出来事)通して、救いの道を備えられたのです。「十字架のことばは滅びる人には愚かであっても、信じる私たちには神の力です。」とある通りです.イエス様も私たちと同じように誘惑に合われました。40日の荒野における断食の後のことです。マタイの福音書4章8〜11節に
「 今度は悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華を見せて、言った。“もしひれ伏して私を拝むなら、これを全部あなたに差し上げましょう。” イエスは言われた。“引き下がれ、サタン。『あなたの神である主を拝み、主にだけ仕えよ。』と書いてある。” すると悪魔はイエスを離れて行き、見よ、御使いたちが近づいて来て仕えた。」
とあります。
現代のクリスチャンは権力の危険性を十分意識していないかもしれません。しかし「指輪物語」の中では、その真実が恐ろしいほど上手に表現されています。今回受賞した作品「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」の中でも、「指輪」(権力の象徴)の魔力に負けた主人公が描かれていました。
私たちの国の歴史においても、それはキリシタンへの迫害という歴史の中で知ることが出来ますし、第2次世界大戦における、韓国での教会への迫害や、日本においても、ホーリネスの群れをはじめ、信仰に従った人たちへの迫害がありました。
権力への誇示が、歴史の中でどれほどの悲劇を生んできたことでしょうか。そして、それは21世紀の今も続いているのです。
私たちは、もう一度、神の声に耳を傾け、謙遜に生きていくべきことを教えられます。この世には、一見取るに足りないような者が必要なのです。そして、神はそのような者をも大切な神の器として用いられるのです。あなたは神に愛されています。お祈りしましょう。
ゴールデングローブ賞とは?
ゴールデングローブ賞とは、「ハリウッド外国人映画記者協会(HFPA)」に所属する会員が、投票により、毎年1回決定される賞です。5000名が投票するアカデミー賞に比べ、ゴールデングローブ賞は約100名前後の投票で決定します。第1回の授賞式が行われたのは1944年。途中、2派に分かれた時期もありましたが、今はまた統一されています。1998年度の授賞式が第55回目、式の時期は毎年1月または2月となっています。アカデミー賞の前哨戦とも呼ばれ、近年、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の受賞者・受賞作品が一致するケースが多く見られ、そのため、アカデミー賞を占う意味でも、賞の重要性が増してきています。ただし、アカデミー賞と違う点として、作品賞・主演男優賞・主演女優賞については、ドラマ(Drama)部門と、ミュージカル/コメディ(Musical or Comedy)部門の2部門があり、それぞれの部門から受賞者・受賞作品が決定されます。